知床四季のフォトエッセイ
笑顔の秘密

知床四季のフォトエッセイ
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フィナーレ10月
県民性 9月
真夏の夜の夢 8月
近況 6月
旅立ち 5月
調和 4月
同窓会 2月
世界で一つだけの花 1月
2003年
師走12月
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星風呂の家 9月
約束 8月
それぞれの思い 7月
達成感 6月
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春の訪れ 4月
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笑顔の秘密
No,2 2002年8月号 著者:村石孝枝
 夏の知床には、たくさんの観光客が訪れる。それまで静かな漁村だっ たこの村があの「知床旅情」で大旋風を巻き起こして以来、ブームの大 小の波はあってもやはり知床は道東の観光の拠点だ。半島の付け根にあ たる斜里町から東へ約40km。反対側の羅臼町が漁業の町なのに対し て、ウトロは漁業と観光が約半数だ。断崖絶壁の海岸線とその後ろには 「未開の地」と云われる原生林がそびえ立っている。このウトロで我が 家は小さな木彫り店をやっている。  真夏に訪れる お客さんとは、そんなに長い時間は話しをすることは できないけれど、それでも時々、本当に小説のようなドラマのようなお 話に出会うことがある。先月も50歳前後の一人旅の男性でフッ切れた ような明るさのある方だった。夕方「こんにちわ」と笑顔で お店に現 れた。「こんにちわ。お元気ですね」と思わず声をかけると「そうかい ・・・実はね亡くなった息子が高校の時 修学旅行で北海道に来たんで すよ。その時に網走まで来たかったんだけど旅行のコースに入っていな くて何時か網走に行きたいと云ってたんで 息子の代わりに来たんです よ」と云い。「息子さん亡くされたんですか?つらかったでしょうね」 と聞くと 一瞬の沈黙の後に、「息子の時も本当につらかったけれど  妻を亡くした時には この世の中に こんなにつらいことがあるのかと 思いましたよ。なにが悲しいて これほど悲しいことはありませんでし た。「えっ奥様もですか?」「ハア 息子に続いて昨年亡くしましてね え」男性はあくまでも明るい。「亡くなった息子のために家内と2人で 網走に寄りながら北海道旅行を計画していたんですが、突然に病気にな って3ヶ月で逝ってしまいました。本当にあっという間でした。だから 今日一緒に旅行しようと思って 写真を車に積んどるんですよ」「友達 に奥さんを大事にしすぎると早死にするゾと冗談で言われていたけど、 その通りなってしまいました」そう言って男性はまた笑った。そして でも・・・とつづける。「僕は妻が本当に好きでした。だからなぜこん なことになってしまうのかと ずっと思い詰めて来ました。でもこの頃 1人の女の人をこんなにも好きになって、こんなにも愛せるなんて・・・ そんな自分がやっと好きになれましてね」とサラリと言う。恋人同士なら それはもちろん当然のことでむしろそうでなくてはおかしい。でも この 50歳は過ぎていると思われるその大柄でよく日焼けした男性の口から その宝石のような言葉を聞くとそのまま冷凍保存しておきたくなる程切 なくて甘いのだ。「いいお話ですね」と言うと「イヤー悪かったね 忙し いのに・・・今まであまり人に話たことなかったんだけどね。まあ、話せ るようになったってことはやっと一山越えたってことカナ」今度はテレた ように笑われた。この男性の人を包み込む フッ切れたような笑顔の意味 が少しだけ分かったような気がした。「来月は妻とアラスカに行くよ。 満天の星を見にね。ありがとう。いい思い出になったよ。」片手をあげて、 車に乗り込む男性の後ろからオホーツクの夕日が追いかけていた。
 
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写真
1枚目:ラベンダー富良野市7月
2枚目:ヒマワリ畑小清水町10月
3枚目:チューリップ上湧別町5月

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