知床四季のフォトエッセイ
流氷ウオーク

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流氷ウオーク
No,8 2003年2月号 著者:村石孝枝
 今 流氷ウオークが静かなブームだ。本来は 流氷の上を歩くのは 禁止されている。特に ここ数年は氷が薄かったり 接岸期間が 短かったりで いつ氷の動きがあるか わからない状態なので非常に 危険だ。  そこで 「この日々変化する流氷達をもっと 積極的に見て感じて 楽しもう!」と企画されたのが「流氷ウオーク」だそうだ。私も  インストラクターをしている友人に誘われて仲間数人と流氷ウオークに 挑戦してみた。  まずは海岸で軽い準備体操をして 専用のドライスーツに着替える。 このスーツは収縮性のある 特殊なポリエステルでできていて とても 暖かい。首までスッポリと縫い目のない 1枚布で作られていて 着ぐるみ のように靴や手袋まで付いている。 「これさえ着ていれば流氷の間に落ちても大丈夫」と インストラクターの友人が 得意満面の笑顔を向ける。 ならば・・・と さっそく途中 流氷のキレ間を手でこじあけて  おそるおそる海水に浸ったみた。「ウン 冷たくない」 それに体じゅうに浮き輪を付けているように 気持ちよく浮く。 顔だけを氷の上に出すので まさに「流氷風呂」だ。 のんびりと青空を見ていると なんだかアザラシの気分も味わえる。 流氷が押し寄せてしまうと 沖から見える風景は一面の雪の原のように 見えて 個々の氷の形をみることはできないが この流氷風呂では氷の 大きさや質感 そして流氷ブルーと呼ばれている 美しい独特の水色を 間近で見ることができた。 「この氷はどこを旅して このウトロに やって来たのかなあ」などと 思いを巡らせていると はるか前方に 何やら枯枝のようなものが見える。 「こんな 流氷原に木などあるわけない」と誰もが そう思ったらしく 急いで駆け寄ってみると それは何と雄鹿の角だったのだ。 でもどうして?なぜ? 「たぶん まだ流氷が接岸してすぐの頃に 鹿が流氷の上を陸だと思って 乗ってしまった。そしたら 流氷が動き出してしまい 鹿は陸に戻れなく なってしまったんですよ」と友人が説明してくれた。さらに 「そして エサがなくて 弱った鹿をオジロワシかオオワシが 襲いかかり 追われた雄鹿は力尽きて 海へ落ちた。そして 角だけが 残った」と言うのだ。  ウ〜ンなるほどねえ。たぶんこの推理は正解だ。 あたりには まだ争った形跡が残っているし 氷のうえには まだ鳥の 羽らしきものや 鹿の骨や毛などが散乱している。  メルヘンの世界のような この流氷の上でくり広げられる 生命を 賭けた戦い・・・。 降り出した雪に「そろそろ帰ろうか」と仲間の声がした。 極寒の季節は まだまだ つづく。
 
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写真
1枚目:知床ウトロ2月

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